ポンコツバロン@回転する夜を観て
一個前の記事で書いた内容と重複する箇所もありますが、そのまま書きます。
ネタバレなどあります。
■会場の空気
PONKOTSU-BARON project 第2弾 『回転する夜』 を観劇しました。
会場に入ると舞台上のセットに布が掛かっていて、そして目隠しのように天井から三枚の幕が下りそこに海の映像が投影されていました。
BGMはその波の音と、ラジオから聞こえてくるような音質の沢田研二(ジュリー)の曲。
なんとなく、自分の住んでいた田舎を思い出して、気味の悪い気持ちになりました。
自分はあまりあの土地が好きではなかったので、それとリンクしてしまい、会場に入る度に胸がザワザワしました。
上演時間になると暫く幕に映像が流れて、セットに掛かっていた布がするすると両端に引っ張られて行くんですが、それがなんだか潮の満ち引きみたいでした。
海の中から部屋が出てきた。
天井から吊られた幕がバサッと落とされ、ストーリーが始まります。
■お話の事
とある田舎町。海に面した丘の上に建つ豪華な一軒家。
兄夫婦と同居し2階の部屋で何不自由のない生活を送る、
ひきこもりの青年ノボル。ある夜、
熱を出して寝込んでいるノボルの部屋に心配した義姉が現れる、と、
全てを失ったあの一夜の記憶が夢の中で蘇る。
だがその記憶は、ノボル自身によって変容し、ノボルの「現在」と交錯していく。
現在と過去の狭間で、もがき続けるノボル。
終わらない夜の中で、ノボルはやがて思いもしない「真実」を知ることになる。そして、その夜が明けた時・・
お話の内容はこちらから
今月の戯曲:蓬莱竜太『回転する夜』 | Performing Arts Network Japan
私は事前に上記の記事を読んで観劇に挑みました。
以前に西島くんが出ていた「体感季節」と同じニオイを感じて、これは覚悟して観に行かないといけないと思い、モダンスイマーズさんの頃のレポートとかないかなと思って調べて見つけました。
あまり関係が上手くいっていない様子の兄のサダオ(西島顕人さん)や、兄の幼馴染たちと一緒にいるには少し不釣り合いな印象を受けるノボル(赤澤燈さん)。
年も離れているらしく*1ヤースケ(島丈明さん)やニッキ(逸見宣明さん)に良いように振り回されていて、その様子はちょっとイジメられている様にも見えるんですが、ノボルは拒否したり臆することなく意見したりするので、これがいつもの様子なんだなあと理解できます。
そんなノボルを一人見守っているアッくん(味方良介さん)。
見守ると言うか、他の二人がノボルにやりすぎないように釘を刺したり、ノボルの良い所を認めてくれたり、兄貴肌な人物のようでした。
物語は始終ノボルの部屋で展開します。繰り返される「あの日の夜」
「あの人がいなかったらちゃんと話せた」「あの人より俺の方が色々考えてる」「あの人のせいで俺は何もかも奪われた」とか、人のせいにする気持ちが強いノボルのセリフが私自身に飛んでくるようでした。
私は甘ったれた人間ですので、どうにかして人のせいにして自分の非を認めたくないのです。認めた方が楽になるし、前を向ける事の方が多いのに
自分自身に怠慢しているから、感情移入が一番強かったのはノボルです。
そして千穂さん(木乃江祐希さん)の言葉に助けられたような気持ちになりました。
千穂さんの言葉は、都会で先生をしていたと言うバックグラウンドがあるからかとても優しくて、でも色んな事を諦めた様な声で、ノボルを諭してくれます。
そして一番最後に、ノボルを動かしたのはサダオ(家族)で。
ずっとそのまま黙っているつもりだっただろうサダオの「誰がやりたくて親父の仕事なんかやっとる」と激昂する声が肌にヒリヒリしました。
繰り返される夜の中でノボルの事をあまり見ようとしないサダオが、漸くノボルをしっかり見据えているシーンでもあったと思います。
ノボルの胸ぐらをつかんで抑え込み殴りながら「お前がもっとしっかりしとったらこんな事にはならんかったがじゃ!」とあの時自分の夢を仕方なしに諦めた事を、ノボルは最後の最後でやっと知ります。
長い長い夜が明けて、部屋に入ってきたサダオと、兄弟が二言三言会話するシーンにとても安堵しました。
物語の終わりに、外に飛び出したノボルが自分の部屋に向かって手を振っていると千穂さんが言い、それに「だら(バカ)(と言う意味の方言ですかね)」と小さく言ったサダオが、手を振り返します。
息のつまるような、心がしんどくなる夜が明けた朝の安堵感が、色んな事を頑張ろうって、行動に移そうって思える舞台でした。
舞台上に生きた人たちが、あの場で舞台を観ていたオーディエンスが、それぞれの身の丈に合った幸せを手に入れられたら良い。
■配役の事
とても良い舞台だっただけに、今回の安川さんの降板がとても残念でした。
現在はもうお元気そうで次の舞台の準備をされている*2とお見かけして、何か長引く様な容体ではなくて安心しました。
パンフレットには4人の対談が掲載されていて、それを読む限り正規の配役は
- ノボル:安川純平
- サダオ:西島顕人
- ニッキ:赤澤燈
- アッくん:味方良介(敬称略)
だったのかな?ツイッターでもいつかのアフタートークで「ノボルは本当は安川君だった」らしいとのお話があったそうです。
ポンコツバロン内で最年少の安川さん、テニミュキャストの頃から愛され系弄られ役だった記憶があります。役柄的にそれこそ、赤澤さんから…(笑)*3
年が近く立海キャスト時代から仲が良かった味方さんや、ポンコツバロン内「ポンコツ担当」とメンバーに言われていた西島さんと安川さんが兄弟など、実際の関係性に近い配役だったのかな。
第一弾の時もそうですが、ポンコツバロンのお芝居は、皆ができる事と皆がやりたい事の擦りあわせが上手いなあと思いました。
第一弾の「オズからの招待状」はオリジナルの舞台でしたし、脚本の方が皆の当時の状況や関係に合わせて書いてくれていた部分もあったかもしれません。
だから、観たかったなJPのノボル。
終わってしまったし、何より本人が一番悔しいだろうけれど、我慢できずに言葉にしちゃう。
■アフタートークの事
思い切ってとった平日、金曜日の夜公演なんですけれど、私こう言ったアフタートークありの公演って初めてだったので何だか妙にドキドキしました(笑)
アフタートーク中に出てきた「一体何が“回転”しているのか」と言うお話。
永山さんや佐野さんのお話を聞きながら自分なりに考えてみました。
私はこの「回転する夜」とは、転がり落ちていくノボルから見た周りの景色なのかなあと思いました。
回転しているのは周りの景色ではなくて、自分自身で、あの時の夜を転がり落ちて行っているんじゃないかなあ。
そして転がり落ちたその先で真実と希望を見つけたのかなと考えました。
パンドラの箱みたいだなって思いました。
ノボルのパンドラの箱は自分の部屋で、色んな絶望を目の当たりにした先に漸く小さく光る朝を見つけて、箱から飛び出して行ったんじゃないかなあ。
そして味方さんが振った「街でよく知り合いにばったり出会う」話…。
中々お喋りできない西島さんにその話を振った際に
「…ばったり会って、そのあとどうするの?」
とか
「(自分が知り合いを見かけたら)見なかった事にする…」
と話して、元々凄く人見知りだと言う事は知っていたけど、そんな事言う人が、人とのしがらみに縛り付けられ、コミュニケーションとか繋がりを大事にしなきゃいけない役柄をやってると思うとずっしりとヘビーですね…
サダオももしかしたら本当は人付き合いはそこまで上手じゃなかったのかもなあ…なんて思いました。
漸く少しはまとまった気がします。
また、人に「俺の推しを観てくれ!!」と言える作品に出会えてとても嬉しい。
次のポンコツバロンの舞台もとても楽しみです。